あなたの知らない札幌(10)「トモエ醤油工場」前編

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    人口200万人の声も聞こえる北の大都市・札幌。その札幌には、多くの観光地や名物施設があります。とはいえ、札幌市民ですらそれらのすべてを知っているわけではありません。そこで不定期連載として「あなたの知らない札幌」と題した企画をスタート。

     

    第9回・第10回は「次の世代に残したい北海道の宝物」というコンセプトで制定されている北海道遺産の、「札幌苗穂地区の工場・記念館群」から2施設をご紹介しています。第10回前編は、明治時代から醤油を製造している福山醸造株式会社の「トモエ醤油工場」について同社製造管理部の斎藤勝章さんと営業サポート部の森清史さんに工場の概要について伺いました。

     

     

    醤油の醸造にぴったりの気候条件

     

    「トモエ」の歴史は、1891(明治24)年にスタートしました。福井県出身の福山甚三郎が日本全国を巡る中で、大豆を多く生産していた北海道こそが今後の日本の醸造を支えると考え、札幌に工場を設立したのがスタートです。現在の社長は6代目、今年で125周年を迎えました。

     

    トモエの醤油工場があるのは札幌市東区苗穂町(なえぼちょう)ですが、この場所に工場ができたのは1918(大正7)年です。現在も当時建てられた赤レンガ造の醤油蔵は現役で稼働しているものもあり、もちろん耐震補強をしていますが100年近く崩れることなく現在に至っています。その丈夫さから、建築関係者が構造の参考にするため見学に来ることもあります。

     

    多くの方が、北海道は醸造には寒すぎるのでは?と思うかもしれませんが、札幌の気候は醤油・味噌の醸造に適しています。特にこの場所は天然伏流水が豊富なので、醤油のほかにも日本酒の工場(『千歳鶴』で有名な日本清酒)もあります。

     

    醤油については、気温が高くなりすぎると雑菌が発生しやすく発酵が一気に進んでしまい味の劣化につながります。しかし札幌は適度な涼しさがあるので、雑菌が発生しにくく発酵もじんわりと進んでいきます。それが、札幌が美味しい醤油を生み出している理由です。

     

     

    減り続ける醤油工場で昔ながらの製法を守る

     

    醤油は日本料理には欠かせないものですので、需要が大きく増減するものではありませんが、醤油製造会社は全盛期の10分の1にまで減ってしまい(国策のために会社が大型化された)、北海道には5件ほどしか残っていません。その中でトモエでは、昔ながらの製法を今でも継続しています。

     

    例えば、醤油を絞る過程では人の手で丁寧に作業をしています。他社は機械化している工場も多く、この過程は1日で終わるようです。しかし私たちは、3日かけて醤油を絞り出します。時間をかけることで、この札幌の工場の空気の中でしか作りえない「トモエの醤油」が完成するのだと信じています。

     

     

    商品の選別に関しても多くの社員が携わっています。この部分もオートメーションしようと思えばできるのですが、人の手でしっかり見極めをすることが大切だと思っています。この手間暇をかけることが私たちの製品の特長なのですが、その手間暇は『昆布しょうゆ』の製造過程が顕著です。北海道の方にとっては意外かもしれませんが、実はこの『昆布しょうゆ』、そのほとんどが北海道で消費されているのです。

     

    後編へ続く


    あなたの知らない札幌(9)「酪農と乳の歴史館」後編

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      人口200万人の声も聞こえる北の大都市・札幌。その札幌には、多くの観光地や名物施設があります。とはいえ、札幌市民ですらそれらのすべてを知っているわけではありません。そこで不定期連載として「あなたの知らない札幌」と題した企画をスタート。

       

      第9回後編は、「酪農と乳(にゅう)の歴史館」(札幌市東区)の館長・猪狩章博さんに、同館を通じて伝えていきたいことについて伺いました。 ※後編はこちら

       

       

      北海道限定!『カツゲン』にまつわる秘密

       

      北海道限定の乳製品『カツゲン』の名前を関した「勝源神社」は、同館の受付横に設置されています。以前は工場見学コースの奥の奥にあったのですが、あまりにも問い合わせが多いことから、すぐに参拝できる場所に移動しました。

       

      ちなみにもともとの「カツゲン」は、「活力の給源」を略して「活源」と名付けられました。発売は1956(昭和31)年ですから、今年で60周年を迎えました。『ソフトカツゲン』というプレーンタイプのものがメインですが、毎年「マスカット」「みかん」などフレーバーが違う商品も発売されます。実はフレーバー担当の職員がいて、毎年考えに考えて新製品を世に送り出しています。

       

       

      技術革新が見て取れる展示の数々

       

      「酪農と乳の歴史館」には、勝源神社のほか北海道の酪農・雪印メグミルクの歴史をパネルにしたものや、当時使用していた機械・資料・写真などを展示しているので、札幌の小学校・中学校の生徒が授業の一環でやって来ることが多い場所でもあります。もちろん、一般の方も無料で入場できます(要予約)。

       

      以前使用していた機械は、日本のバター作りに大きな影響を与えたデンマークを中心としたヨーロッパのものが多く、技術革新の凄さも展示でわかっていただけると思います。かつては何時間もかけて重い機械を回転させて製造していたバターですが、今ではわずか3秒でできてしまいます。そのバターや牛乳を北海道から東京へ運ぶ場合は、コンテナの半分がドライアイスで埋まっていました。もちろん今は空輸ができますので、そんなことはありません。先人が苦労してきたからこそ、今の北海道の酪農の発展があるのだと思います。

       

      また1500冊ほどの専門書も所蔵していて、某大学教授も3日缶詰めになって論文を書いていたというエピソードもあります。この図書閲覧コーナーはあまり知られていないのですが、リスト化しているので簡単に本を探せますし、希望があれば無料で貸し出しもしています。

       

       

      レジェンド・原田雅彦が監督を務めるジャンプチームの展示も

       

      雪印メグミルクといえば、ウィンタースポーツにも積極的に参加しています。同館にも、ジャンプチームの展示を行っているのですが、現在は原田雅彦が監督、岡部孝信がコーチ(ともにリレハンメル、長野オリンピックメダリスト)を務め、後進の育成にあたっています。

       

      実はこの展示は大きくリニューアルする予定でいます。そのリニューアルを担当するのは、現役引退後コーチ・監督を歴任した斉藤浩哉(長野オリンピックメダリスト)です。最近は葛西紀明選手に話題を持っていかれているので(笑)、そろそろ当社のチームの選手もどんどん活躍してもらいたいです。

       

      このように、北海道の酪農と雪印メグミルクの歴史が詰まった同館ですが、私が見学の際に皆さんにお話ししているのは「命の大切さ」です。牛が命を懸けて生産した牛乳をいただいているわけですから、その過程というものを知っていただければ命の尊さが伝わるのではと思っています。そしてここ、北海道で美味しいバター・牛乳が生産されていることをより多くの方々にお伝えできればと考えています。


      あなたの知らない札幌(9)「酪農と乳の歴史館」前編

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        人口200万人の声も聞こえる北の大都市・札幌。その札幌には、多くの観光地や名物施設があります。とはいえ、札幌市民ですらそれらのすべてを知っているわけではありません。そこで不定期連載として「あなたの知らない札幌」と題した企画をスタート。

         

        第9回・第10回は「次の世代に残したい北海道の宝物」というコンセプトで制定されている北海道遺産の、「札幌苗穂地区の工場・記念館群」から2施設をご紹介します。第9回前編は、来年40周年を迎える「酪農と乳(にゅう)の歴史館」(札幌市東区)の館長・猪狩章博さんに、北海道における酪農の歴史について伺いました。

         

         

        雪印メグミルクが札幌本社にこだわる理由

         

        「酪農と乳の歴史館」は、1975(昭和50)年に建設が決定し1977(昭和52)年に落成した施設で、来年40周年を迎えます。現在は雪印メグミルクという社名ですが、当時はその前身である北海道製酪販売組合の創立50周年を記念して建てられたもので、最初の名前は「雪印乳業史料館」でした。

         

        同館の見学とセットになっているのが、雪印メグミルクの札幌工場の見学です。広報機能などは東京に移転していますが、雪印メグミルクの本社はあくまで札幌です。

         

        なぜ札幌にこだわるのか……。それは、雪印メグミルクの前身・北海道製酪販売組合がここ札幌で酪農をスタートしたからです。同組合が設立されたのは1925(大正14)年のことです。宇都宮仙太郎をはじめとする生産者たちが集まり、「協同友愛」「相互扶助」「寒地農業の確立」をコンセプトにスタート、日本で初のバターの生産工場となりました。

         

        当時の日本では、バターはまだ一般的なものではありませんでした。ですので、製造法も何もわかりません。そこで仙太郎らはデンマークに渡り、酪農を学びその技法を持ち帰りました。

         

        仙太郎は実は九州男児です。その仙太郎がなぜ札幌で酪農をしようと思ったのかというと、ホルスタインにとって最高の気候(暑さに弱く寒さに強い)だったことと、綺麗な水が豊富にあることでした。

         

        バター・牛乳などの乳製品を作るのには、綺麗な水が不可欠です。もちろん、牛乳を水で薄めるのではなく(笑)、さまざまな機械を洗浄したり製品を冷却したりするためには大量の水が必要になるわけです。その水は、綺麗に越したことはありません。そこで、現在の札幌工場がある苗穂町(なえぼちょう)が選ばれたわけです。

         

         

        バター・牛乳・チーズ以外に発売された「北海道限定乳製品」

         

        最初の製品はバターでしたが、発売当初からパッケージがほとんど変わっていないことも特徴です。また、牛乳・チーズは昭和に入ってから製造されるようになりましたが、今のような価格帯ではなく、富裕層に限られた商品でした。

         

         

        その中で、ちょっと変わった商品が登場します。その名は『カツゲン』。この『カツゲン』は、雪印メグミルクの商品の中でも珍しく札幌工場のみで製造されている乳製品飲料です。そして北海道限定で発売されているのですが、その名前から受験生に人気でして「勝源(かつげん)神社」があるくらいなのです。

         

        後編へ続く


        あなたの知らない札幌(8)「札幌市生涯学習センターちえりあ」後編

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          人口200万人の声も聞こえる北の大都市・札幌。その札幌には、多くの観光地や名物施設があります。とはいえ、札幌市民ですらそれらのすべてを知っているわけではありません。そこで不定期連載として「あなたの知らない札幌」と題した企画をスタート。

           

          第8回後編は、札幌市生涯学習センター「ちえりあ」(札幌市西区)の須田眞彰さんに、札幌市内ではここまで豊富な在庫はないという希少な機材や趣味を生かした講座について伺いました。 ※後編はこちら

           

           

          20台の16mm映写機と6000本のフィルムを貯蔵

           

          ちえりあには、今はすでに製造が中止されている16mm映写機が20台あります。16mm映写機は学校で使用するために導入されたのですが、最近はパソコンやDVD再生機から直接スクリーンに映し出すプロジェクターが普及したので、稼働する場面は減ってきてしまいました。

           

          しかしながら、あのプチプチという音とともに映し出される白黒のカウントダウンや、味わい深い映像の人気は高く、月に3〜4回ほど使用されます。しかもこの使用というのは、無料で貸し出しを行っているという意味で、町内会や学生サークルなどが利用しています。特に学生サークルには「初めて見るもの」という意味でも人気があるようです。

           

          フィルムの在庫は6000本ほど。もともと学校教育のためのものなので、社会科や理科で使う教材が多いのですが、中には札幌冬季オリンピック(1972年)や地下鉄開通までの道のりなどの貴重な資料映像もあり、こちらも貸し出しを行っています。

           

           

          生涯学習を実践する「ご近所先生」

           

          あと、ちえりあで行っているのが「ご近所先生」という企画です。これはもともと「さっぽろ市民カレッジ」という、私たちで考えた企画を私たちが選んだ講師に行ってもらう講座からスタートしたのですが、私たちだけのアイディアでは講座の幅が狭まってしまうということで、講師を一般募集したのがきっかけで始まりました。

           

          「さっぽろ市民カレッジ」はちょっと硬派なビジネス向け、「ご近所先生」は体操や歴史、語学など気軽に参加できる講座が多くなっています。年間150〜60講座が開講され、1講座全5回で終了し、何度も継続されている講座もあればサークルに発展していく講座もあります。

           

          この「ご近所先生」の1講座は20名を定員としているのですが、時代の流行がダイレクトに反映されるのも面白いところです。最近は歴史やチーズなどの講座が人気で、募集からすぐに定員が埋まってしまうこともあります。

           

           

          ちなみに「ご近所先生」はちえりあオリジナルの企画なのですが、せっかくなので少しでも多くの方に体験してもらおうと各区民センターとも協力しています。出張している講座はちえりあ以外でも受けることができますので、興味のある方はチェックしてみてください。講師の募集も半年にごとに行っていますので、自分の趣味や知識を広めたいという方は応募してみてください。

           

          ちえりあ付近は、石屋製菓の白い恋人ファクトリーや手稲記念館など観光施設が徒歩圏内に集中している場所でもあります。地下鉄東西線「宮の沢」駅直結という便利なアクセスなので、観光途中や芸術作品の見学がてらにぜひお越しください。


          あなたの知らない札幌(8)「札幌市生涯学習センターちえりあ」前編

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            人口200万人の声も聞こえる北の大都市・札幌。その札幌には、多くの観光地や名物施設があります。とはいえ、札幌市民ですらそれらのすべてを知っているわけではありません。そこで不定期連載として「あなたの知らない札幌」と題した企画をスタート。

             

            第8回前編は、昨年開館15周年をむかえた札幌市生涯学習センター「ちえりあ」(札幌市西区)の須田眞彰さんに、同館の知られざる芸術作品について伺いました。

             

             

            明治開拓期の寺子屋の近くに開設

             

            ちえりあは、2000(平成12)年にオープンした施設で、「生涯学習センター」「宮の沢若者活動センター」「教育センター」「リサイクルプラザ」という4施設からなる複合公共施設です。その中心になっているのが「生涯学習センター」で、定員436名のホールのほか大中小さまざまな研修室・スタジオを持っています。

             

            ちえりあのある札幌市西区宮の沢は、札幌市最古の教育施設ともいえる明治開拓期に建てられた寺子屋「時習館」跡地の程近くにあります。「生涯学習」を目的とするこの施設の場所としてはぴったりということで、この場所に設立されました。

             

             

            数多くの知られざる芸術作品

             

            そして、そのような場所にふさわしい芸術作品を設置しようということで、9名の芸術家が施設のためにさまざまな作品を作ってくれました。ガイド盤はあるのですが、なかなかわかりづらい場所にあったり、滅多に目に触れない場所にあったり、広く知られていない作品もあります。

             

            その中のひとつが、ちえりあホールの緞帳(どんちょう)です。『北の空に浮かぶカタチ』という作品なのですが、大学在学中に別海町の牧場で1年間過ごしていたという美術家・大竹伸朗さんの作品です。この緞帳、実はあまり見ることができません。というのも、ちえりあホールで開催されるイベントでは、お客さんが入る時間には緞帳を上げておくことが多く、終演後もお客さんがホールを出てから下げることが多いためです。

             

            この『北の空に浮かぶカタチ』、大竹さんの代表的な作品ということもあり、設置後に一度外して東京で開催された大竹さんの個展に出展したことがあります。これがとても大変でして(笑)、幅17mある緞帳を少しずつおろしながら巻き取っていってロールにするので、とんでもない長さの郵送物になるのです。特殊な車両で移送してまた戻って来て、ということはほかの施設の緞帳ではほとんどないことだと思います。

             

             

            あとは、上を向けば気づくのですが、ホールホワイエにある『移ろう月』(小樽市生まれの彫刻家・國松明日香さんの作品)や、ロビーの吹き抜け上部に吊るされている『学ンデ時ニコレヲ習フ』(根室市生まれの芸術家・岡部昌生さんの作品)はいつでも見ることができます。特に後者は、時習館跡近くの路地100mの路上を特殊な布に擦り取ってできた作品なので、正方形の排水溝などもくっきり浮き出ています。

             

            このような芸術作品が設置されているちえりあなのですが、実は希少なあるものがたくさんあります。それは、昭和40年代以前生まれの方々にはとても懐かしいものなのです。

             

            後編へ続く


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