カーネーション
瑞々しさと濃厚さが交錯した「SWEET ROMANCE」という誘い
《L: 直枝政広(Vo&G) 大田譲(B) :R》
プロフィール
1983年12月 「耳鼻咽喉科」を前身に「カーネーション」結成。当時からのオリジナルメンバーは、直枝ひとり。1984年 シングル「夜の煙突」でレコードデビュー。以降、数度のメンバーチェンジを経ながら、時流に消費されることなく、数多くの傑作アルバムをリリース。練りに練られた楽曲、人生の哀楽を鋭く綴った歌詞、演奏力抜群のアンサンブル、圧倒的な歌唱、レコードジャンキーとしての博覧強記ぶりなど、その存在意義はあまりに大きい。来年結成30周年を迎える。
オフィシャルHP
http://www.carnation-web.com/
ライブ情報
2012.11.17(土) 札幌・COLONY
2012.11.18(日) 旭川・カジノドライブ
この3年間はツアーをやりながら色々工夫して、身体を作って来たという感じです。
直枝さんにお話を伺うのは3年ぶりとなります。カーネーションにとってこの3年間はどのような時間でしたか?
「二人体制になって様々なことを見直す時期に来ていたので、ライブにしてもドラマーやサポートメンバーのことを考えながら作らなければならなかったですし、色々と時間がかかりました。でも、とにかく数多く人前に出て演奏し、工夫して、身体を作って来たという感じですかね。」
その間にミニアルバム「UTOPIA」(2011.11リリース)がリリースされました。この中に「女川」という東日本大震災に関連した1曲があって、凄く印象に残っています。
「僕はルーツが東北なので、余計に色々なことが辛くて大変な思いをしました。震災後の4月ですかね、渋谷のとあるバーでレピッシュのtatsuと梅津和時さんと3人でセッションしたんですが、その時梅津和時さんが「東北」という曲を持って来ていたので、「僕はお客さんの前で1曲作ります」と言って出来た曲なんです。昔、石巻を旅をした時に牡鹿半島の浜辺で遊んだことがあったのですが、鳴き砂の白い浜辺のイメージがその時降りて来たんです。そのメロディに「女川」と名付けました。そのちょっと前の話になりますが、震災直後のソウル・フラワー・ユニオンに誘われたイヴェントが印象深いですね。懸命にやったのですが、どうしても固かったですね。ぼくらもお客さんも。でもそういう時なのに、ソウル・フラワーの態度が立派でね、人の気持ちを和らげたり、持ち上げたりがとても上手でした。その姿を見て音楽って凄いなと思いました。本当、泣けてきてしばらく楽屋から出られませんでしたね、あの日。」
そういうことがあったんですね…。
「アルバムを制作しないといけなかったんですが、状況を見渡しても、それはまだちょっと無理かなと。ただ僕たちは止まることが出来ないので『UTOPIA』という心象のドキュメンタリーのような形でミニ・アルバムを作りました。」
それから1年弱…9月19日に「SWEET ROMANCE」というアルバムがリリースされましたね。
「1曲目の「Spike & Me」という曲の歌詞の一部がタイトルになっているんですが、これが今回一番押し出したい色彩かなと。いわば閃きですね。このタイトルを決めて物事を進めていくうちに、とてもいいタイトルだ、これが本当にやりたかったことだという世界をパッケージング出来ました。凄く音楽的な言葉だと解釈していますが、あらゆる気持ちを込めることが出来るキーワードですね。」
「SWEET ROMANCE」は自分でも何度も聴きたくなるアルバムになったと思っています。
大人のミュージシャンがジャンルを超えてロックで再構築するとこういう音楽になるんだろうなと思いました。
「色々な曲が入っていますが、1枚のアルバムの中に筋が通っているような気がします。物語も感じますし、ようやく自分でも何度も聴きたくなるアルバムになったと思っています。僕は“音楽の妖精たち”と呼んでいるんですが、ここ数年で出会った色々な方々が僕らのの庭で音楽を奏でてくれて、出来上がりも凄く新鮮でした。」
2曲目の「I LOVE YOU」は古い楽曲なんですよね。
「これは20年前に「天国と地獄」というアルバムを作った時にデモであったんですが、レコーディングされなかったんです。今年の5月に「天国と地獄」の20周年記念で再現ライブというのをやった時に、アイディアが湧いて、未発表曲だけれども今こういう楽曲もいいんじゃないのかなと思って改めてデモを作りました。そうしたら大田(譲)君にも「若々しくていいよ」と言われまして(笑)。」
このお話を知らなければ最近作られたと思わせるような瑞々しさを感じました。
「基本、本質は何も変わってないです。曲を作り始めた中学生の頃から何も変わってない感じなんですよ(笑)。あと、なんでこんなにバンドを長く続けていられるのかと、よく聞かれるんですが、いいアルバムを作りたいんですよ。心から納得のいくものを。だから続けてるんですよね。アイディアはとことん放り込みたいですね、20年・30年・50年持つ音楽にしたいと思っています。」
個人的に大好きなのが「Gimme Something,I Need Your Lovin'」です。削ぎ落とされたシンプルさが印象に残りました。
「これはトリオでやってるんですけど、僕はギターのカッティングだけで押してますね。レコーディングもほぼ一発録りで、活きのいいところを残しました。」
11月17日・18日に北海道でライブがありますね。
「4人組でドラムに張替智広くん、キーボードに藤井学くんに入ってもらいます。アルバムがカラフルでアイディアに満ちた内容ですし化けてくると思うので、もう一つの「SWEET ROMANCE」が表現出来ると思います。」
それでは最後に北海道のファンにメッセージをお願いします。
「北海道の方の内に秘めた熱さを昔から感じています。「SWEET ROMANCE」は最大の自信作なので是非聴いてもらいたいと思います。そしてライブでお会いしましょう!」
インタビュー後記
実に3年ぶりに直枝さんにお会いした。その気さくな人柄に触れ、長くミュージシャンとして一線で活躍している方の素晴らしさを再認識。音楽への思いはその活動の長さと反比例しているかの如く貪欲で瑞々しい。9月19日にリリースされたアルバム「SWEET ROMANCE」の中の1曲「I LOVE YOU」はなんと20年前の楽曲だ。その楽曲を現在のカーネーションが最新のサウンドで奏でてしまう…こんな元気なベテランがいるのだから日本の音楽シーンの奥深さは底なし沼のようだ。物凄く若くて濃厚な「SWEET ROMANCE」…濃密な本物の音楽を体感してほしい。(橋場了吾)
「SWEET ROMANCE/カーネーション」
(2012.9.19発売/¥2800(tax in)/PCD18684)
1.Spike & Me
2.I LOVE YOU
3.In Dreams
4.なんかへん
5.Station
6.Bye Bye
7.Gimme Something, I Need Your Lovin'
8.口笛ふいて
9.UTOPIA
10.未来図
11.遠くへ
12.Bye Bye(Reprise)
※初回限定盤(¥3200(tax in)/PCD18686-7/2CD)も同時発売
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- 2012.09.24 Monday
- MUSIC NAKED(ハダカの告白)
- 19:00
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- by Ryogo Hashiba